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東京地方裁判所 昭和43年(ワ)13504号 判決 1969年7月18日

原告(反訴被告)

前坂正

ほか一名

被告(反訴原告)

日商運輸興業株式会社

ほか一名

主文

被告ら(反訴原告ら)は各自原告(反訴被告)前坂正に対し二六万六〇〇五円、原告伊藤烈に対し五万八一七二円および右各金員に対する昭和四三年一一月三〇日以降支払い済みに至るまで年五分の割合による金員の支払いをせよ。

原告(反訴被告)前坂正、原告伊藤烈の被告ら(反訴原告ら)に対するその余の請求を棄却する。

原告(反訴被告)前坂正は、被告(反訴原告)斎藤実に対し一万八七二〇円、被告(反訴原告)日商運輸興業株式会社に対し一二万二二〇〇円および右各金員に対する昭和四四年三月二九日以降支払い済みに至るまで年五分の割合による金員の支払いをせよ。

被告ら(反訴原告ら)の原告(反訴被告)前坂正に対するその余の請求を棄却する。

訴訟費用中、本訴についてはこれを三分し、その二を原告(反訴被告)前坂正、原告伊藤烈の、その余を被告ら(反訴原告ら)の、各負担とし、反訴については、原告(反訴被告)前坂正と被告ら(反訴原告ら)との間においてこれを五分し、その一を原告(反訴被告)前坂正の、その余を被告ら(反訴原告ら)の各負担とする。

この判決は、原告(反訴勝告)前坂正、原告伊藤烈、被告ら勝訴の部分に限り、かりに執行することができる。

事実

第一当事者双方の求める裁判

一、本訴

(一)  請求の趣旨

(1) 被告ら(反訴原告ら)は各自原告(反訴被告)前坂正に対し六八万〇一四二円、原告伊藤烈に対し一三万五一七二円および右各金員に対する昭和四三年一一月三〇日以降支払済みに至るまで年五分の割合による金員の支払いをせよ。

(2) 訴訟費用は被告ら(反訴原告ら)の負担とする。

(3) 仮執行の宣言

(二)  請求の趣旨に対する答弁

(1) 原告ら(反訴被告前坂)の請求を棄却する。

(2) 訴訟費用は原告ら(反訴被告前坂)の負担とする。

二、反訴

(一)  請求の趣旨

(1) 原告前坂(反訴被告)は、被告(反訴原告)斎藤に対し三二万一〇〇〇円、被告(反訴原告)日商運輸興業株式会社に対し三〇万七一〇〇円および右各金員に対する昭和四四年三月二九日以降支払済みに至るまで年五分の割合による金員の支払いをせよ。

(2) 訴訟費用は原告(反訴被告)前坂の負担とする。

(3) 仮執行の宣言

(二)  請求の趣旨に対する答弁

(1) 被告ら(反訴原告ら)の請求を棄却する。

(2) 訴訟費用は被告ら(反訴原告ら)の負担とする。

第二当事者双方の主張(本訴)

一  原告ら(反訴被告前坂)の請求原因

(一)  (事故の発生)

原告ら(反訴被告前坂)は、次の交通事故によつて傷害を受けた。

なお、この際、原告(反訴被告)前坂正(以下原告前坂という。)は、その所有に属する原告車を損壊された。

(1) 発生時 昭和四三年六月四日午後八時一五分頃

(2) 発生地 東京都杉並区大宮前五丁目二九三番地先交差点

(3) 被告車 軽自動四輪車(練馬四え六五四八号)

運転者 被告(反訴原告)斎藤実(以下、被告斎藤という。)

(4) 原告車 普通乗用自動車(品五は七七九八号)

運転者 原告前坂

被害者 原告前坂、同伊藤(同乗中)

(5) 態様 別紙記載のとおり、前記交差点において、原告車と被告車とが出合頭に衝突したものである。

(6) 結果 原告前坂は、左手背部挫創、右膝部挫創並びに打撲、左膝打撲擦過創、左下腿創、腹部打撲など、原告伊藤は、顔面切創、角膜損傷、左臀部打撲、左下腿打撲、左腕関節部擦過創などの傷害を受けた。

(二)  (責任原因)

被告ら(反訴原告ら)は、それぞれ次の理由により、本件事故により生じた原告らの損害を賠償する責任がある。

(1) 被告(反訴原告)日商運輸興業株式会社(以下、被告会社という。)は、被告車を所有し自己のために運行の用に供していたものであるから、原告らの人損につき、自賠法三条による責任。

(2) 被告会社は、被告斎藤を使用し、同被告が被告会社の業務を執行中、後記のような過失によつて本件事故を発生させたのであるから、原告前坂の物損につき民法七一五条一項による責任。

(3) 被告斎藤は、前記交差点に一時停止の道路標識が設置され、左右の見とおしも困難であつたから、同交差点の手前で一時停止して、左右の道路の交通の安全を確認すべき注意義務があるのに、これを怠つた過失により本件事故を発生させたものであるから不法行為者として民法七〇九条の責任。

(三)  (損害)

(1) 原告前坂の損害

(イ) 治療費 三万九七〇〇円

原告前坂は、昭和四三年六月四日から同月一〇日まで樺島病院に入院し、その後も引き続き通院治療をなし、治療費合計三万九七〇〇円を支出した。

(ロ) 付添人費 一万〇五〇〇円

原告前坂は、右入院期間中、妻の付添を受けたので、一日一五〇〇円として、一万〇五〇〇円相当の損害を受けた。

(ハ) 入院雑費 一四〇〇円

(ニ) 通院、通勤交通費 二万二八八〇円

(ホ) 休業損害 一万六七〇二円

原告前坂は、右治療に伴い、七日間休業を余儀なくされ、有給休暇七日を失い、その給与相当額合計一万六七〇二円の損害を蒙つた。

(ヘ) 慰藉料 三〇万円

(ト) 原告車修理費 二二万七一六〇円

(2) 原告伊藤の損害

(イ) 治療費 一万四一〇〇円

(ロ) 通院交通費 一六八〇円

(ハ) 休業損害 七三九二円

原告伊藤は、治療に伴い、三日間休業を余儀なくされ、有給休暇三日を失い、その給与相当額合計七三九二円の損害を蒙つた。

(ニ) 慰藉料 一〇万円

原告伊藤は、前記受傷により、入院を要したが、家庭の事情で入院をやめ、一一日間の通院を余儀なくされ、その顔面に醜痕を残すことになつたのであり、その精神的苦痛に対する慰藉料としては、一〇万円を相当とする。

(四)  弁護士費用 原告前坂分六万一八〇〇円、同伊藤分一万二〇〇〇円

以上により、原告らは被告らに対し右損害の賠償を請求しうるものであるところ、被告らがその任意の弁済に応じないので、弁護士たる本件原告訴訟代理人にその取立てを委任し、原告前坂は、六万一八〇〇円を、原告伊藤は、一万二〇〇〇円を支払つた。

(五)  (結論)

よつて、被告らに対し、原告前坂は六八万〇一四二円、原告伊藤は一三万五一七二円およびこれに対する訴状送達の日の翌日である昭和四三年一一月三〇日以後支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める。

二、請求の原因に対する被告らの答弁ならびに抗弁

(一)  第一項中(一)ないし(五)は認める。(六)は知らない。

第(二)項中、被告斎藤の過失を除き認める。

第(三)ないし第四項は、不知

(二)  (免責)

被告斎藤は、被告車を運転して、前記交差点の直前で一時停止して、右交差点に進入した。ところが、原告前坂は、徐行し、しかも、すでに交差点に進入していた被告車の進行を妨げてはならない注意義務があるにかかわらず、これを怠つて進入したため、本件事故が発生したものである。

右のとおりであつて、被告斎藤には運転上の過失はなく、事故発生はひとえに原告前坂の過失によるものである。また、被告会社には運行供用者としての過失はなかつたし、被告車には構造の欠陥も機能の障害もなかつたのであるから、被告会社は自賠法三条但書により免責される。

(三)  過失相殺

かりに然らずとするも、事故発生については原告前坂の過失も寄与しているのであるから、賠償額算定につき、これを斟酌すべきである。

第三当事者双方の主張(反訴)

一、被告らの請求原因

(一)  (事故の発生)

被告斎藤は、本件交通事故によつて傷害を受け、この際、被告会社はその所有に属する被告車を損壊された。

(二)  (責任原因)

原告前坂は、次の理由により、本件事故により生じた被告らの損害を賠償する責任がある。

(1) 原告前坂は、原告車を所有し自己のために運行の用に供していたものであるから、被告斎藤の人損につき、自賠法三条による責任。

(2) 原告前坂は、事故発生につき、前記のような過失があつたから、被告会社の物損につき、不法行為者として民法七〇九条の責任。

(三)  (損害)

(1) 被告斎藤の損害

(イ) 交通費 一万五〇〇〇円

(ロ) 休業損害 六八〇〇円

(ハ) 慰藉料 三〇万円

被告斎藤は、本件事故により手首を捻挫し、一カ月稼働することができず、さらに、一カ月助手としての作業に従事するほかはなかつた。その後も、この捻挫部分の苦痛を続いているが、その慰藉料としては三〇万円を相当とする。

(2) 被告会社の損害

(イ) 給料支払による損害 八万三一〇〇円

被告会社は、被告斎藤の欠勤中および助手としての稼働中の一部の給料を支払い、八万三一〇〇円の損害を受けた。

(ロ) 被告車修理代 一六万一〇〇〇円

(ハ) 代車使用料 六万三〇〇〇円

(四)  (結論)

よつて、原告前坂に対し、被告斎藤は右金員のうち三二万一〇〇〇円、被告会社は三〇万七一〇〇円およびこれに対する反訴状送達の日の翌日である昭和四四年三月二九日以後支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める。

二、請求の原因に対する原告前坂の答弁

第一項は不知

第二項中、原告前坂が原告車を所有し、これを自己のために運行の用に供していたことは認めるが、その余は否認する。第三項は争う。

第四、当事者双方の提出、援用した証拠〔略〕

理由

第一、本訴について

一、(事故の発生)

請求の原因第一項(一)ないし(五)(本件事故の発生)は、当事者間に争いがなく、〔証拠略〕によれば、本件事故により、原告前坂は、左手背部挫創、右膝部挫創並びに打撲、左膝打撲擦過創、左下腿擦過創、腹部打撲原告伊藤は、顔面切創、左臀部打撲、左下腿打撲、左腕関節部擦過創、角膜損傷の各傷害を受けたことが認められ、右認定に反する証拠はない。

二、(責任原因)

(一)被告斎藤について

〔証拠略〕、によれば、以下の事実が認められる。以下の認定に反する〔証拠略〕は前掲各証拠に照らし措信し難く、他に以下の認定に反する証拠はない。

本件事故現場は、別紙図面記載のとおり大宮前方面から久我山稲荷方面に至る幅員四・八メートルのアスフアルト舗装の道路と上高井戸五丁目から吉祥寺に至る幅員五・六メートルのアスフアルト舗装道路とがほぼ直角に交わる交差点である。そして、右交差点に上高井戸五丁目方面から入る場合には、右側の角に、大宮前方面から入る場合にはその左側に家屋があるため、互に自己の道路上からこれと交差する道路を見通すことは困難である。この交差点に上高井戸五丁目方面から入る場合横断歩道の手前左側の個所に「一時停止」の標識が掲示されていた。被告斎藤は、上高井戸五丁目方面から進行して、交差点に差しかかり、「一時停止」の標識の掲示されている附近で、一時停止したが、同地点ではこれに交差する道路から進行してくる車輛があるかどうかを確認し得ない状況にあるにかかわらずそのまま右方の安全確認することなく、交差点に進入したところ、折から、原告前坂が原告車を運転して、大宮前方面から時速約四〇キロメートルの速度で交差点内に進入してきたため、避けるいとまもなく、交差点中央附近において被告車の右側面と原告車の前部とが接触した。そうだとすれば、被告斎藤は、一時停止の標識の設置されている道路から交差点に進入するものであるから、一時停止して左右の安全を確認すべき注意義務があり、一時停止したからといつて左右の安全を確認しない過失はこれを免れることはできない。もつとも、原告前坂も右交差点に進入する際は、徐行して左右の道路の安全を確認すべき注意義務があるのにこれを怠つた過失があり、これを本件事故発生の一因をなしていることは明かであるが、そのことによつて被告斎藤の右過失を左右するものということはできない。

従つて、被告斎藤は、民法七〇九条により、原告らの損害を賠償する責任がある。

(二)被告会社について

被告会社が被告車を所有し、自己のために運行の用に供していたこと、被告会社が被告斎藤を使用し、同被告が被告会社の業務を執行中、本件事故を発生させたものであることは、当事者間に争いがない。そして、被告斎藤に本件事故発生につき過失の認められることは、先に認定したとおりである。従つて、被告会社は、原告らの人損につき免責の認められない限り、自賠法三条、原告前坂の物損につき民法七一五条一項により、それぞれ賠償する責任があるということができる。

そこで、免責の抗弁について判断すると、被告斎藤に過失の認められることは、先に認定したとおりであるから、その余の点について判断するまでもなく理由がない。

更に過失相殺の抗弁について判断すると、本件事故発生につき、原告前坂にも過失の認められることは先に認定したとおりであり、双方の過失の割合は、被告斎藤において六、原告前坂において四と認めるのが相当であるから、原告前坂の賠償額の算定につき、これを斟酌すべきことになる。

三、(損害)

(一)原告前坂の損害

(1)治療費

〔証拠略〕によれば原告前坂は、前記受傷により昭和四三年六月四日より同月一〇日まで樺島病院に入院し、その後も引き続き同月二九日(実日数五日)まで通院治療をなし、治療費として三万九七〇〇円を支出したことが認められるが、前記原告前坂の過失を斟酌すると、右金額の六割にあたる二万三八二〇円を被告らに負担させるのを相当とする。

(2)付添人費、入院雑費

〔証拠略〕によれば、原告前坂は、右入院期間中、同人の妻の付添を受けたことが認められるところ、付添費として、一日一、五〇〇円、入院雑費として一日二〇〇円を各相当とするから合計一万一九〇〇円のうち、原告前坂の前記過失を斟酌すると、七一四〇円を被告らに負担させるのを相当とする。

(3)通勤、通院交通費

〔証拠略〕によれば原告前坂は前記傷害により、通勤通院のための交通費として合計二万二八八〇円を支出したことが認められるが、前記原告前坂の過失を斟酌すると、一万三七二八円を被告らに負担させるのを相当とする。

(4)休業損害

〔証拠略〕によれば、原告前坂は、森永乳業株式会社に勤務し一日平均二三八六円の給与を得ていたところ右治療に伴い、七日間休業を余儀なくされ、有給休暇七日を失つたことが認められるから、合計一万六七〇二円のうち、前記原告前坂の過失を斟酌すると、一万〇〇二一円を被告らに負担させるのを相当とする。

(5)慰藉料

原告前坂が本件事故により前記傷害を受け、入、通院をしたことは、先に認定したとおりであり、その慰藉料としては、前記原告前坂の過失を斟酌すると五万円を被告らに負担させるのを相当とする。

(6)原告車修理費

〔証拠略〕によれば、原告前坂は、本件事故により原告車を破損され、修理代金として二二万七一六〇円を負担したことが認められるが、原告前坂の前記過失を斟酌すると、一三万六二九六円を被告らに負担させるのを相当とする。

(二)原告伊藤の損害

(1)治療費

〔証拠略〕によれば、原告伊藤は、前記受傷により、昭和四三年六月四日より同月一四日まで(診療実日数六日)樺島病院に通院し、治療費として一万四一〇〇円を支出したことが認められ、同額の損害を受けたものということができる。

(2)通院交通費

〔証拠略〕によれば、原告伊藤は、本件受傷により、通院交通費として、一六八〇円を支出したことが認められ、同額の損害を受けたものということができる。

(3)休業損害

〔証拠略〕によれば、原告伊藤は、森永乳業株式会社に勤務し、一日平的二四六二円の給与を得ていたところ、右治療に伴い、三日間休業を余儀なくされ、有給休暇三日を失つたことが認められるから、合計七一三九二円相当の損害を受けたものということができる。

(4)慰藉料

原告伊藤は、前記受傷により前記のとおり通院したことは、先に認定したとおりであり、その慰藉料としては、三万円を相当とする。

(三)弁護士費用

〔証拠略〕によれば、原告らは、被告らに対し右損害の賠償を請求しうるところ、被告らがその任意の弁済に応じないので原告ら訴訟代理人にその取立を委任し、原告前坂が六万一八〇〇円、原告伊藤が一万二〇〇〇円の各負担をしたことが認められるから、本訴認容金額のほぼ一割にあたる原告前坂につき二万五〇〇〇円、原告伊藤につき五〇〇〇円をそれぞれ被告らに負担させるのを相当とする。

第二、反訴について

一、(責任原因)

原告前坂が原告車を所有し、自己のために運行の用に供していたことは、当事者間に争いがなく、原告前坂に事故発生につき過失があつたことは、先に認定したとおりである。従つて、原告前坂は、被告斎藤の人損につき自賠法三条、被告会社の物損につき民法七〇九条により、それぞれ賠償の責任があるということができる。

もつとも、被告斎藤にも過失の認められることは、先に認定したとおりであるから、被告らの賠償額の算定につき前示割合で被告斎藤の過失を斟酌すべきことになる。

二、(損害)

(一)被告斎藤の損害

(1)交通費

〔証拠略〕によれば、被告斎藤は、本件事故により右肘部打撲の各傷を受け、これにより通勤、通院のための交通費として一万五〇〇〇円を支出したことが認められるが、被告斎藤の前記過失を斟酌すると六〇〇〇円を原告前坂に負担させるを相当とする。

(2)休業損害

〔証拠略〕によれば、被告斎藤は本件事故当時、被告会社に自動車運転者として勤務し、一日一七〇〇円の給与を得ていたが前記受傷により、一カ月ばかり運転手助手(給与は、一日一三〇〇円)としての勤務を余儀なくされ、これにより少くとも六八〇〇円の給与を得ることができなかつたことが認められるから、被告斎藤の前記過失を斟酌すると二七二〇円を原告前坂に負担させるのを相当とする。

(3)慰藉料

〔証拠略〕によれば、被告斎藤は、前記傷害を受け、樺島病院に四日間通院したことが認められるが、被告斎藤の前記過失を斟酌すると、一万円を原告前坂に負担させるのを相当とする。

(二)被告会社の損害

(1)給料支払による損害

〔証拠略〕によれば、被告会社は、被告斎藤が本件事故により約一カ月被告会社の勤務を休んだにかかわらず、その間給与の支払をしたことが認められるが、被告斎藤の前記受傷の程度、通院実日数等を考慮すると、右被告会社の損害が直ちに本件事故と相当因果関係にある損害と認めることは困難である。

(2)被告車破損による損害

〔証拠略〕によれば、被告会社は、本件事故によりその所有する被告車を破損され、修理代として一六万一〇〇〇円の支出を余儀なくされたが、前記被告斎藤の過失を斟酌すると、六万四四〇〇円を原告前坂に負担させるのを相当とする。

(3)代車使用料

〔証拠略〕によれば、被告会社は、被告車の破損により昭和四三年六月五日より同月二九日まで二一日間、日商運輸株式会社から代車を一日七〇〇〇円の割合で借り受け、合計一四万七〇〇〇円の支出をしたことが認められるが、前記被告斎藤の過失を斟酌すると五万七八〇〇円の限度で原告前坂に負担させるのを相当とする。

第三、結論

よつて、本訴請求中、被告らに対し、原告前坂は、二六万六〇〇五円、原告伊藤は、五万八一七二円および右各金員に対する訴状送達の日の翌日である昭和四三年一一月三〇日以降支払ずみまで年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり、その余の各請求は失当として棄却することとする。反訴請求中、原告前坂に対し、被告斎藤は一万八七二〇円、被告会社は一二万二二〇〇円および右各金員に対する反訴状送達の日の翌日である昭和四四年三月二九日より支払ずみに至るまで年五分の遅延損害金の支払を求める限度で理由があり、その余の各請求は失当として棄却することとする。訴訟費用の負担につき、民事訴訟法九二条、九三条、八九条、仮執行の宣言につき同法一九六条をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 福永政彦)

<省略>

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